| タイトル | : 祖国 |
| 記事No | : 168 |
| 投稿日 | : 2007/11/22(Thu) 09:26 |
| 投稿者 | : 戸塚洋二・東大特別栄誉教授、文化勲章(講師) |
交響詩「わが祖国」はボヘミヤ(チェコ)の作曲家ベドルジハ・スメタナの作曲で、6つの交響詩からなります。2番目の交響詩「モルダウ」はもっともポピュラーな曲ですね。最近、第5番の「ターボル」と第6番の「ブラニーク」がなぜか好きになり繰り返し聴いています。「ターボル」には、ボヘミヤの使徒ヤン・フスの騎士団が行進しているような単調ですが重厚なメロディーが繰り返し演奏されます。同じメロディーは第6番の「ブラニーク」でも使われています。 ヤン・フスをウィキペディアで調べてみました。フスは、1400年に僧職を得たのち、1402年にプラハ・カレル大学長になっています。その後「ウィクリフ主義」(私はこの主義を勉強していない)をボヘミヤに広め、教会改革に乗り出しました。しかし、1414年コンスタンツ公会議に招集され、ウィクリフ主義とフスの思想は異端と審問され、火あぶりの刑に処せられました。その後、ヤン・フスを崇拝する一派は、1420から1434年ころカトリック勢力と、いわゆるフス戦争を展開しています(この時期フランスはイギリスと百年戦争の最中でジャンヌ・ダルクが活躍しています)。この事件は、1500年代のマルティン・ルターに始まる宗教改革や1600年代の30年戦争に続くのでしょうか。いずれにせよ、ヤン・フスの殉教精神は生き残り、ボヘミヤの使徒・英雄として現在でも人々の心の中に生きているようです。 「わが祖国」のCDには、ドイツ語のタイトルで「Mein Vaterland」(父の土地)と書かれています。日本語では祖国、母国と言いますが父国とは言いません。もう一つの違いは、「国」という言葉ではなく「Land、土地」という語が使われていることです。英語では、Motherland、Fatherlandという両方の単語を父祖の出た土地として使います。とくにアメリカは移民の国ですから、自分のルーツのある地域のことを指します。彼らが現在住んでいるアメリカ自身を何と呼んでいるかというと、「Homeland」です。 日本の「祖国」は、建国以来単一民族からなる日本「国」を無意識に「Land」と同じ意味に取ったと考えられ、国という語を使っても自然なような気がします。 私は外国生活が長かったせいか、「祖国」という言葉が好きです。
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