| タイトル | : ハッブル宇宙望遠鏡とバコール博士 |
| 記事No | : 230 |
| 投稿日 | : 2007/12/14(Fri) 09:10 |
| 投稿者 | : 戸塚洋二・東大特別栄誉教授、文化勲章(講師) |
先日、アメリカの宇宙望遠鏡科学研究所から、研究所の講堂を「ジョーン・バコール講堂」と命名することにした、とのメールをもらいました。 故ジョーン・バコール博士はプリンストン高等研究所に所属した高名な宇宙物理学者です。太陽ニュートリノの権威でもあったので、私は、彼の数多い友人の一人でもありました。彼のエピソードをちょっと紹介したいと思います。 ハッブル宇宙望遠鏡は1990年スペースシャトル・ディスカバリーで打ち上げられ、直ちに観測に入りました。ショッキングなことに、主鏡研磨に使ったコンピュータ・プログラムにバグがあり、ピンボケの画像しか取れないという、大失態となりました。 アメリカ天文学会長となっていたバコール博士はアメリカ下院に赴き、ハッブル宇宙望遠鏡は直ちに修理しなければならない、という証言をしました。証言の中で、宇宙望遠鏡の修理が成功した暁には、これこれの研究成果が上がると、4つの例を挙げて分かりやすく説明しています。 私が最も惹かれるのは、彼の証言の最後にある数行の文章です。 As marvelous and as difficult an achievement as the fulfillment of this promise will be, I personally will be disappointed if this is all that HST (Hubble Space Telescope) does. I believe that the most important discoveries will provide answers to questions that we do not yet know how to ask and will concern objects that we can not yet imagine. In my personal view, a failure to discover unimagined objects and answer unasked questions, once HST functions properly, would indicate a lack of imagination in stocking the Universe on the part of the Deity. 簡単に訳すとこうなります。 「証言で約束した研究目的の達成は、困難ではありますが、それはそれですばらしいことです。しかし、ハッブル宇宙望遠鏡がこれだけこのとしかできないのなら、個人的にはがっかりです。本当に重要な発見というものは、どう質問していいのかわからない疑問に答えを出すことですし、想像もしていなかった天体を見つけ出すことだと思うからです。それができなければ、われわれの想像力が欠如しているといわざるを得ません。」 ハッブル宇宙望遠鏡はまだ本当の研究目的を達成していないと思います。 (バコール博士の議会証言記録は、http://www.sns.ias.edu/~jnb/に入ってPopular articlesをクリックし、新しいページでHubble Space TelescopeのところにあるTestimony before U.S. Congressをクリックしてください。)
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