| タイトル | : 信念を貫くこと |
| 記事No | : 266 |
| 投稿日 | : 2008/01/04(Fri) 09:07 |
| 投稿者 | : 有馬朗人・塾長 |
新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。年頭にあたり先ず考えましたことは、自分の考えが正しいと信じるならば、どんなに反対があっても信念を貫くべきだということです。勿論きちんとした論理と倫理に基づいた信念でなければなりません。自然科学における信念について考えてみます。自分がいくら正しいと信じていても、実験でその考えの不完全さや誤りが確認されたり、理論的に論理の不正確さや矛盾が明らかになれば、自らその誤りを正すことをためらってはなりません。この場合「君子豹変」するのは恥ずかしいことではありません。 私のささやかな研究生活で、発表した考えが、世界中の原子核研究の仲間の大半に受け入れられず、自分の着想の正しさを説明することに苦労したことが、何回もあります。その一例は多くの原子核のベータ崩壊の寿命が予想以上に長いことについて、我々が1972年に提案した理論的説明です。数年後カナダのチョーク・リヴァーと、更に10年後にミシガンのイースト・ランシングのグループがこの考えを支持しました。しかし、その他の大部分の研究者は、きわめてエキゾティックな説を信じ、我々の説をどうしても受け入れませんでした。この反対論が正しければ、原子核内では大変不思議な、しかし面白いことが起っていることになります。従って刺激的なことの好きな人々は、その考えに傾いたのでした。この説を発表してから20年間実に多くの国際会議や国際研究集会で、繰り返し我々の説とその後の発展について話し、その上で打打発止の討論を行いました。その度きわめて強い反対に直面しました。しかし私はがんとして自説の正しいことを信じておりました。 1993年頃東京の実験グループは我々の考えが正しいということを実験的に証明してくれました。その結果直ちにイタリアのヴァレンナなど方々で国際集会が開かれ、結局東京、カナダ、イースト・ランシングの研究者の考えが世界的に認められ、この30年に渡る問題が解決したのでした。正しいと思ったら、世界中の人が何と批判しようと、反対しようと、自らの信念を持ち続けることは大切だとつくづく思います。
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