[リストへもどる]
一括表示
タイトル体感できない現象、ニュートリノ
記事No276
投稿日: 2008/01/11(Fri) 09:08
投稿者戸塚洋二・東大特別栄誉教授、文化勲章(講師)
 このホームページで、先生方は、目や耳や皮膚で観察することのできる面白い現象を紹介してくださいます。しかし、世の中には、体にまったく感じず、精密な機械を使わないと観測できない現象が多くあります。
 私が研究してきたニュートリノもその一例です。ニュートリノは万物の基本粒子の一つで、実は宇宙の中で最も数の多い基本粒子なのです。ビッグバン理論では、ニュートリノは、宇宙の中に1立方センチ当たり300個あると予言しています。少ないじゃないかと思うかもしれませんが、ニュートリノは宇宙の隅々までこの密度で存在しているのです。水素原子を作っている陽子や電子は、ニュートリノと比べると100億分の3くらいしか宇宙にないのです。

 ニュートリノの大きな特徴は、電気を持っていない中性な粒子だ、という点です。私たちの体は原子や分子からできていますが、それらを結び付けているのはすべて電気の力です。ニュートリノは電気を持たないのでお互いにくっつくことができず、だから物質の中には存在し得ないのです。
 電気を持たないニュートリノは、水素や酸素などの物質ともほとんど反応しません。体にニュートリノがぶつかっても、何もしないで通り抜けてしまうので、私たちは痛くも痒くも感じません。つまり、ニュートリノを体感できないのです。

 太陽は巨大なニュートリノ発生装置で、四方八方にニュートリノを放出しています(これらのニュートリノを太陽ニュートリノといいます)。もちろん、1億5千万キロメートル離れた地球にも降り注いでいますし、私たちの体を常に突き抜けています。
 皆さん、どのくらいの数の太陽ニュートリノが体を突き抜けていると思いますか。私たちの体を突き抜けているニュートリノの個数は、体の大きさにも依りますが、毎秒少なくとも10兆個以上という数になります!ニュートリノは地球なぞ易々と突き抜けてしまいますので、私たちの体は昼も夜も常に毎秒10兆個以上のニュートリノが通り抜けています。しかし、痛くも痒くもありませんね。
 人間が体感できない太陽ニュートリノを観測するには、標的となる物質を多く準備して、その中でかすかに起こる反応を捕らえます。日本のスーパーカミオカンデ装置は世界で最も優れた観測装置です。装置は5万トンの水を使っていますが、その中心部分にある22500トンを標的に使います。外側の27500トンは外から来るノイズの遮蔽に使っています。22500トンの水を通り抜ける太陽ニュートリノの数は、私たちの体を通り抜ける数よりずっと多く、毎秒10兆個の4万倍にもなります。それでも装置が捕らえることのできる反応は、1日に、たったの15個です。大変難しい観測です。
 ニュートリノやスーパーカミオカンデに興味のある方は、
http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/sk/intro/index_j.html
を訪問してください。

タイトルRe: 体感できない現象、ニュートリノ
記事No280
投稿日: 2008/01/17(Thu) 14:23
投稿者Gin
「ニュートリノ」という言葉と最初に出会ったのは、中学生位の時、ある科学雑誌に載っていたSF漫画の中だったと記憶しています。当時は世紀末の不安感からか、いくつもの人類滅亡のセオリーがまことしやかに語られていた時期でもあり、その漫画も、近距離での超新星爆発によってあらゆる宇宙線が地球に降り注ぎ、遺伝子を破壊された人類が全滅するという、気が滅入るような内容でした。
ニュートリノや超新星爆発といった言葉自体もまだ目新しく、本来なら宇宙の姿を解明する手がかりとして、もっと明るい関心の持たれ方をして当然だったと言うのに、あの頃の殺伐とした雰囲気は一体何だったのでしょうか。
先端科学、特に肉眼で見えないものを扱う分野が、一般人にとってはブラックボックスであったこともひとつの原因ではあるでしょう。
小柴先生のノーベル賞受賞は、この分野への社会的認知度を高めたという意味でも、大変意義のあることだったのではないかと思います。

先日、リサ・ランドール博士を取り上げたNHKの番組中、東大生が理論物理学の魅力について「鉛筆と紙があれば宇宙について知る事ができる」と話す1コマがありました。
実際に宇宙の果てを見ることはできなくても、その姿について考え、知ることはできる。だからやりたいのだ。
昨年の合宿の中で出た「そんな事を研究して何になるんですか?」という質問へのひとつの答えだと思いました。

研究者たちは今、スイス・ジュネーヴで始まる大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の実験に注目しています。
山手線に匹敵する規模で建設されたこの実験装置は、素粒子という極微の世界で起こる現象の観察を通して、宇宙全体を説明する理論の実証を試みるためのもので、素粒子物理学や理論物理学の世界に大きな発見をもたらす事になるだろうと言われています。
カミオカンデ同様、宇宙の姿について知るための手がかりをニュートリノや素粒子といった極微の世界に求める、そして、その極微世界の観察のために今度は巨大な実験装置を必要とする、という図式は、非常に面白いですよね。

LHC実験の1つには、多くの日本人研究者・技術者も参加しているとのこと。
理論や実験について全てを理解する事ができなくても、壮大なテーマに対して果敢に挑戦している人がいるという事実と、実験の結果何が分かるのか、という事には、私自身少なからずワクワクしています。

実証された理論は、いつの日か必ず応用されていくものですから。

タイトル驚きです!
記事No292
投稿日: 2008/01/25(Fri) 17:27
投稿者剛征
戸塚先生は、人間の身体を一秒間に10兆個のニュートリノが突き抜けている、と教えて下さいましたが、ニュートリノは、スーパーカミオカンデでも、一日15個しか捉えられないとのお話しで、ニュートリノという物質の大きさとかは、測る事が出来るのかどうか知りたいです。
 今年の夏休みには、スーパーカミオカンデに行って見たいと思います。