(貴田浩之・2期塾生)
創造性の育成塾第3回 OB・OG会が2017年3月20日に都内で開催された。
今回のOB・OG会は中学生・高校生を中心に約60人が参加し、塾長である有馬朗人先生の講演と共にOB・OG会は始まった。

有馬塾長による講演
有馬先生は「宇宙の初めは何だったのか」とOB・OGに質問をされ、この疑問に対する答えとしてガモフが提唱していた「ビッグバン」についての逸話を語られた。29歳の時に有馬先生がアメリカへ留学されていた際に、この「ビッグバン」を裏付ける証拠が丁度発見されたが、今度は「ビッグバンの前には何があったのか」という新たな疑問が生まれたとのことであった。このように「1つの疑問が解決されつつも、更なる疑問が湧き出てくる」という「面白い時代」に私たちは生きていると話された。またミューオン(宇宙線の一種)を用いて、レントゲン検査のように地下深くのマグマを観測しようという研究がある一方で、地震の予知の未だに難しい現状を語られた。現代は、このような自然科学分野での課題に加えて世界平和や社会福祉なども含めて、「科学技術で解決すべき課題が多数存在する時代」であり、そのような「時代」を生きる私たちに、研究や技術開発を進めて世界が驚愕するような発見をする共に、日本の地位を上昇させ世界に貢献できる人材になるよう努力して欲しい、という力強い激励を下さり講演を締めくくられた。
続いて、11期の井上健彰さんと同じく11期の大野浩輝さん。10期の山田佑哉さんからの活動報告があった。
井上さんは、ロボコン県大会で審査員特別賞を、科学の甲子園ジュニア県大会で2位をそれぞれ獲得するなど精力的に各種大会に参加している。井上さんは、練習で上手くいっていることを本番で成功させる難しさを学んだ一方で、全国大会で多くの塾生と出会い刺激を受けたことにも触れ、今後もそうした大会で塾生と再会できるよう頑張りたいと意気込みを語ってくれた。
大野さんは日本地学オリンピックに参加し、予選敗退者の中から特別に選出され、その後の本選に帯同した経験を紹介してくれた。本選では、試験だけでなく、地学分野の研究者による講演や留学生との懇談会、国立科学博物館筑波研究所での骨格標本の見学など興味深い体験ができたとのことだった。また、試験ではジュニア金賞を獲得し中学生では1位となり、来年以降も頑張りたいと抱負を語った。
事務局注:
日本地学オリンピックは、中学生と高校生が参加できますが、国際地学オリンピックの代表選考を兼ねているため、中学三年生以上でないと本選(二次選考)に進めません。中学一年生・二年生は、参加しても本選には進めませんが、予選(一次選考)の成績優秀者は、チャレンジ受験として本選と同じプログラムを受けることができます。中学二年生で参加した大野君は、予選で優秀な成績を収めたのでチャレンジ受験となりました。来年以降も活躍が期待されます。
山田さんは、長年取り組んでいる「軽石の研究」などについて語ってくれた。山田さんは、「軽石の研究」で二年連続日本学生科学賞に入選している。

「日本地学オリンピック」について話す大野さん
引き続き、1期の佐々木駿さん(東京大学大学院理学系研究科修士2年)と2期の福永健吾さん(東京大学理学部有機化学科4年)による研究発表が行われた。
佐々木さんは以前に生態系の講義を受けた際に、植物の光合成こそが生態系を動かす原動力になっていると感じたことをきっかけに、現在は植物の形態と光の関係を研究しており、今回はその一部を紹介してくれた。植物の葉は一見同じように見ても、日光に近い上の方と下の方では全く性質が異なることや、実は細胞内で葉緑体が光に応じて移動していることなど、私たちが普段見慣れている植物の意外な一面を知ることができた。将来への展望として、気候変動に対する植物の応答の予測や、地球外で植物が存在する可能性の模索に取り組みたいと語ってくれた。
福永さんは当時塾生だった頃に受けた、ノーベル賞受賞者である白川英樹先生の導電性高分子の講義が印象に残り、現在はナフタレンという物質を環状に繋げる研究をしている。ナフタレンを環状に合成すると51種類(!)もの物質ができるとのことで、これら多数の物質を仕分けていく大変さをスライドを交え解説してくれた。また、その結果として「構造的に美しい」物質が抽出され、さらに環の中に陽イオンが入るという特徴的な性質も示しており、将来的にはスマートフォンなどで身近なリチウムイオン電池にも応用されるかもしれないとのことだった。ちなみに51種類もの物質を仕分ける過程では、当時合宿で黒田先生が講義をされた「鏡像異性体」が重要な役割を果たしており、塾生だった当時には想像できなった多くのことが現在の研究に結びつていることを語ってくれた。

研究について話す福永さん

会場からは研究に対する質問も
休憩を挟み、最後にグループトークが行われた。グループトークでは、各分野の大学生・院生をテーブルマスターとして、中学生・高校生が情報・物理・化学・生物・医学・文系の各テーマ別に分かれ、その分野で学ぶ内容や将来の進路、研究テーマなど、様々なことに関してフリートークがなされた。1ラウンド40分で計2ラウンド行われ、自分の専門について熱く語る先輩と好奇心旺盛な後輩との間でどのテーブルも時間ぎりぎりまで活発な議論が交わされた。

「生物」のテーブルマスター(メンター)はOB・OG会長の1期佐々木さん

「医学」のテーブル

「情報」のテーブル

「文系・進路全般」のテーブルでは、
既に企業で活躍するOB・OGがテーブルマスターを務めた
盛況のうちに第3回創造性の育成塾OB・OG会は終了した。OB・OG会事務局では現在、来年も同時期の開催を予定しており、次回も大学生以上を中心に更なるOB・OGの参加を期待したい。