手加減無しの先生

【今日のひとこと】 2014年10月14日

(山邊恵介・5期塾生)

みなさん、こんにちは。育成塾5期生の山邊です。
すっかり今日のひとことへの投稿をサボってしまいました。すみません。
同期の5期生は今、大学受験勉強真っ盛りといったところでしょうか。
(私は、高校を中退の後、再入学をしたせいで、一年留年しておりますので、まだ余裕をかましております。)

是非、大学受験の合間でも何でも投稿をしていただけると嬉しいです。
さて、世は「青色発光ダイオード」開発に携われたお三方がノーベル物理学賞を受賞され、連日お祭り騒ぎです。
いつか、どなたかのお名前を育成塾講師で拝見するかもしれません。楽しみです。

ノーベル賞発表の少し前、育成塾のホームページに小さな記事が載りました。
それは夏合宿で4年間に渡り、育成塾講師を務められた北澤宏一先生の訃報の記事でした。
http://juku.netj.or.jp/jukudayori/20141001_01.html

あまりに突然のことで、非常に大きなショックを受けました。

「最近、夏合宿には出られていなかったけど、まだお亡くなりになるようなお歳では…」
そんなことを考えながらあちこち調べていたら、急性肝不全による急死との事でした。

北澤先生の講義は数多の先生方がいらっしゃった中で、今でもはっきりと思い出すことが出来ます。夏合宿の中でも私達、塾生同士の議論が最も活発だったのではないかと思います。
先生のご専門である、「高温超電導体」の講義。北澤先生の講義は当時中学2年生の私の頭で理解するのには相当苦労するものでした。

マイスナー効果、ジョセフソン効果、電気抵抗の完全なる消失…
用語や数式だけ聞けば間違いなく、ノートに書き留めることもままならなかったでしょう。
しかし、北澤先生は「燃えて」いらっしゃいました。

低く落ち着いた声でありながら、先生の眼は強く光り、私達を見つめていました。
忘れられない言葉があります。
北澤先生が超伝導技術がいかに有用であるかを説かれていた時、ふとおっしゃった言葉。
「私はリニアが大好きなんです。」

何と美しい、素敵な言葉だろうと思いました。
その一言が全てを説明していました。

中学2年生には難しすぎる数式や、観念的な電界の説明。そして壮大な構想の数々。
それらは「大好き」なものについては何一切の妥協を許さない北澤先生の姿勢だったのではないでしょうか。
たとえ相手が誰であろうと、(学会発表だろうが中学生相手の講義だろうが)手加減しない。
なぜなら、北澤先生の話される言葉は、私達聴衆という存在をはるかに超え「リニア」に向かって話されている。

現実的に導入されるまでにはまだ年月の掛かるであろう「理想の技術」に先生は惜しみない愛を向けられていた。
たとえ聴衆が完璧に理解できていなくても(これは私の解釈ですが)構わない。
自らの持ちうる知識と経験と情熱の限りを持って、「リニア」を語り、説き、描く。
それは、目には見えぬ「リニア」がどこかでその「愛」に気づき、こちらに向けて微笑んでくれはしまいか、という先生の強い思いがそうさせたのではないでしょうか。

先生は「リニア」を「愛して」おられた。
先生は故に手加減なさらなかったのだと思います。
あまりに無骨で、純粋な科学への愛。

北澤先生は科学技術振興財団の理事長を勤められておいででしたが、2011年に発生した福島第一原発事故を受け、退任。原発事故発生から半年後の9月末には福島原発事故独立調査委員会(民間調)の委員長に着任され、迅速な報告をなさいました。
しかし、民間調委員長の重責、多忙さは我々の考えをはるかに越えていたことでしょう。この時期のご無理がたたったのではと、いらぬ考えが頭をよぎります。

エネルギー問題についても多くのご提言をなさっていた北澤先生には「超伝導送電技術」の現実化を、という思いをいっそう強くされたのではないでしょうか。
「サハラ砂漠に設置したソーラーパネルで作った電気を、海を越えて、日本で使うことが出来る。」
そんな日を一日でも早くと願われていた矢先に、遠くへ行ってしまわれました。

学長をなさっていた東京都市大学の挨拶の中で「Think,Globally.Act,Locally」という言葉を引用されています。
http://www.tcu.ac.jp/guidance/greeting/

「世界的規模で考え、手に届くところで動け。」という意味の言葉は、我々の前にいても、はるか『リニア』に向けて話されていた先生ならではと思います。また、元はこの言葉は60~70年代のアメリカの環境保護活動のスローガンでもあります。

先生の中で、「自然」と「エネルギー」と「人間」を結び付けていたのが「科学」であり「超伝導」だったのでしょう。先生の科学への「愛」はどんな力も変えることが出来なかったし、どれだけ時間が経ってもその「形」も「熱」も変わることはないでしょう。ちょうどそれは、超伝導が電気をあらゆる負荷から守り、伝えるように。

北澤先生、ありがとうございます。後は何とか僕らで頑張ります。
安らかに。

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