アメリカ便り 10 (1)

【今日のひとこと】 2016年1月20日

(今田 慧・6期塾生)

明けましておめでとうございます。

6期生の皆さんは高校生最後のお正月でしたね。いよいよ、これから大学受験だと思います。アメリカでは、大学受験シーズンは九月頃に始まり年末でほぼ終わります。僕も、大学受験というか入学願書提出は昨年末でほぼ終わり、ゆっくりしたお正月、今年は土日があるので三日間(通常は1月1日の一日だけが休日です)を過ごすことができました。今回は、アメリカ便り5でも少し書きましたが、アメリカの大学受験に関して、少し詳しく書きます。

 

全般的なこと

日本の大学受験のように、大学が指定する日時に志願校に行って入学試験を受ける形式の入学試験は、アメリカにはありません。下に少し詳しく書くように、アメリカの入学試験には基本的に五つの必須要素があります。一つ目は、当たり前ですが、自分の名前や高校名、経歴、連絡先などを書いた事務的な内容、二つ目は共通試験(Standardized Test)の結果です。共通試験は、アメリカには州によって時差があるので、時刻はずれますが、全米で同じ日に実施されます。日本のセンター試験と似ています。三つ目は高校四年間の成績、四つ目は高校四年間の課外活動、五つ目は大学側が指定する題目での作文、つまりエッセイです。原則として、この中の共通試験の結果を除く四つをインターネットで各志望校の入学担当係に送るだけで入学試験は終わりです。共通試験の結果は、それぞれの主催団体に依頼して、その主催団体から志望校に送って貰います。入学試験の日に、たまたま単に風邪を引いただけで、実力はあるのに入学試験に落ちるということはありません。逆に、とんでもなく背伸びした大学に偶然入れることもありません。

 

共通試験 Standardized Test

共通試験、別名で大学進学適性評価試験あるいは大学進学能力評価試験は、政府や大学連合が主催しているのではなく、企業や法人が主催している試験です。多くの大学が受け容れている共通試験には、非営利法人のThe College Boardが実施するSAT (Scholastic Assessment Test)とACT, Incorporatedが実施するACT (American College Testing)があります。

SATには、三つの独立した試験があります。一つ目の試験はCritical Reading Test (800点満点)で、文章完成問題(一つの文内に一つか二つの空欄があり、その空欄に当てはまる単語、もしくは単語の組合せを五つの選択肢の中から選ぶ)が19問、文章読解問題が48問です。文章読解問題では100〜200語から700〜800語程度の文章を読み、それに関連する五択問題に答えます。これら19問と48問の問題を適切に並べ替えてできる24問、24問、19問を、休憩を挟んで、それぞれ25分、25分、20分の時間制限内で解答します。合計24+24+19=67問で70分なので、一問に使える時間は、文章を読む時間も含めて約1分です。SATの二つ目の試験はWriting Test(800点満点)で、四つの分野があります。一つ目の分野は、文法をテストする問題(文法的に正しい文章か、もしくは一箇所だけ文法的な誤りのある単語を含む一つの文章を読み、その中の誤っている単語を、誤り候補の四単語の中から選ぶか、もしくは誤り無しかを選ぶ五択問題)が18問です。二つ目の分野は、書かれた一つの文章内のある部分(二語から十数語のフレーズ)が、最も良い表現か(選択肢A)、あるいはそれ以外の選択肢B,C,D,Eのいずれかの方がより良い表現かを選ぶ五択問題が25問です。三つ目の分野は、400〜600語程度の一つの段落を読み、その中に挿入するとより理解しやすくなる文章を選ぶ、あるいは、その挿入箇所を選ぶ問題が6問です。これらの18問、25問、6問の問題を適切に並べ替えてできる35問と14問を、休憩を挟んで、それぞれ25分、10分で解答します。合計49問で35分です。最後の四つ目の分野は、その場で与えられる題目でのエッセイ、つまり英作文で、25分使えます。SATの三つ目の試験はMathematics Test(800点満点)です。これも、問題の正解を五つの選択肢から選ぶ五択問題が44個、選択問題ではなく、通常の解法と解答を書く問題(例えば、簡単な問題では、100より小さく100に最も近い平方数の半分は幾つか? 例えば、18は平方数36の半分)が10問で、合計54問をバラバラに三つの群に分け、そのそれぞれの群を、休憩を挟んで25分、25分、20分で解答します。SATの試験では、解答を書かなければ減点されませんが、書いて間違っていると、配分点の四分の一だけ減点されます。

ACTも似たような感じですが、二つ違いがあります。一つ目の違いは、English(75問を45分で解答)、Mathematics(60問を60分で解答)、Reading(40問を35分で解答)のテストの他に、Science (40問を35分で解答)のテストがあることです。それぞれ36点満点です。そしてこの四つの総合得点を再び36点満点に換算して何点と表示されます(Composite Scoreと呼びます;四得点を平均して四捨五入のようです)。二つ目の違いは、標準のACTにはWriting (エッセイ)が含まれていないことです。受験したい大学がエッセイの提出を求めている場合には、標準外のACT Writing Test(36点満点)を別に受験することができます。

アメリカの多くの大学が、SATの点数もしくは標準ACTとACT Writingの点数のいずれかの提出を求めています。

さらに、難関校の多くは、これらの共通試験の点数ばかりではなく、SATの全く別の試験、つまり科目別試験(Subject Testと言います)を受け、その点数を提出するように求めています。例えば、理系の難関校の多くは、数学の中のpre-calculus(微積分の準備段階の指数関数、対数関数、三角関数など)を含む科目別数学試験の点数、理科の科目の中の物理、化学、生物のいずれか一つの科目別理科試験の点数を求めています。そういった難関校に合格する人たちのSATの点数は2300〜2400点(満点は2400点)で、科目別試験の結果も780〜800点(満点は800点)と言われています。

アメリカのSATやACTの共通試験の良い所は、日本と異なり、いつでも、何回でも受けて良いという点です。自信があれば、いやアメリカの共通試験での自分の実力を知りたければ、高校一年生でも受けることができます。しかも、一年に6〜7回実施されるので、好きな時期の試験を受けることができます。多くの大学は、その何回も受けた試験の中の最高得点を受け容れます。しかも、SATの点数を提出する場合、Mathematicsは高校四年の時の試験の点数、Critical Readingは高校三年生の秋の試験の点数というように、その最高得点(Super Score)を選んで提出することを許容する大学もあります。ACTにはこの最高得点を選んで提出する方法はなく、同じ日に受けた全ての試験の点数を報告するしかありません。

最後に、上に書いたSATの内容は今年の3月のSATテストから大きく変わり、減点制なども無くなるようです。”new SAT”でinternet検索をすると、多くのweb siteが出てくるので、興味のある人はそれらを参考にして下さい。

 

高校の成績  Transcript

アメリカの大学受験は長距離競走です。共通試験を高校一年の時から受けられるのもその一つですが、もっと肝心なのは、四年間の高校での成績を提出する点です。各学年一年間の各学期について、各科目別の点、さらに、四学年を通しての全科目に渡る総合平均点(GPA; Grade Point Average)が書かれた成績表(transcript)を提出します。三年制の高校に通学している生徒は、中学の最終学年の成績を入れて全部で四年間の成績表にします。各学年の科目毎の点数は数字ではなく、A,B,C,D,E,F (Fはfailで落第)で示され、芸術などの科目はpass(合格)かF(落第)です。四学年を通しての全科目に渡る総合平均点(GPA)は、0〜4点の数値で示されます。通常、このGPAが、生徒の成績を見る目安になります。例えば、超難関大学に合格する生徒のGPAはほぼ3.8〜4.0で、大学入学試験での選考時には4.0を越えることもあります。4点満点なのに「なぜ?」なのですが、その生徒の高校のランクや生徒が受けた授業の難易度などを参考に、大学側で重み付けをすることがあり、その場合にGPAが4点満点を越えます。アメリカ便り2で書きましたが、試験のextra問題も正解すると100点満点を越える点数をもらえるのに似ています。高校四年間の選択科目も含めた全ての科目に渡る平均点を3.8〜4.0(100点満点にすると95〜100点)に維持するのはかなり大変です。保健体育、外国語(僕は中国語)や数学、物理、英語のエッセイ、小説読解、世界歴史などのほとんどの科目で、四年間続けてA+(97点以上〜100点), A(93〜97点), A-(90〜93点以下)を取り、B+(87点以上〜89点), B(83〜87点), B-(80〜83点以下)はあっても数回以内にしなければなりません。( )の中は100点満点に置き換えた点数で、点数の境目は高校や先生によって僅かに違うので大体の目安です。

 

課外活動 Extra Curricular Activity

入学願書には、transcriptの他に、高校四年間でどのような課外活動をしたのかを書きます。僕の高校では、四年間に60時間のボランティア活動が必修なので、もちろん、それも書きます。ボランティア活動については、アメリカ便り3、5、7にも少し書きました。この課外活動の内容は、大学受験にとってはとても重要です。なぜならば、難関大学の場合、その大学の最終選考に残る入学志願者のGPAはほとんど同じで3.6〜4.0に集中しているので、最後に「ものを言う」のが、この課外活動や後で書くエッセイです。つまり、成績だけを上げようと勉強ばかりしていたのでは、目指す大学には入れません。聞いた話ですが、たといGPAが4.0でも、恐らくこの課外活動が低調だったために、難関大学に不合格という人は多いようです。

色々なことが課外活動に含まれます。例えば、「夏休みにアルバイトをしてお金を稼いだ」も課外活動で、社会活動に参加したという評価を受けます。

とある難関大学の入学試験担当をしている教授から聞いた話を書きます。ある年、中西部の田舎にある名もない高校の生徒がその難関大学に応募してきました。通常の大学では、応募者の出身高校に関する情報をデータベースに入れていて、その高校の生徒のGPAをどう重み付けするのかなどを考慮しています。例えば、校内の競争が激しく授業のレベルも高い難関高校の場合には、GPAが3.6でも、その他の内容が良ければ最終選考に残るようにしたり、授業や試験が易しくて容易に高いGPAを得られる高校の生徒のGPAを余り高くは評価しないなどです。その教授の難関大学に応募してきた生徒の高校は、それまでにその難関校への応募者が無かったような無名の高校だったので、その高校の情報が、その難関大学のデータベースには無かったのですが、その生徒のGPAはある程度高く、しかも課外活動が素晴らしく良かったのです。で、教授の話はおおよそこうでした。「彼は、その高校で、自分がやりたかった『ロボットを勉強し、さらにロボットを作るクラブ』を立ち上げた。そのクラブに仲間を勧誘し、州のロボット大会で優勝した。つまり、彼は、新たな構想でクラブを立ち上げ、仲間を巻き込み、そのロボット部員を率いて、そのロボットクラブをかなりのレベルに育て上げた。その彼の能力、特に企画能力とリーダーシップが素晴らしかったので、審査委員会で多くの委員の賛成を得て入学が許可された。」難関大学では、どこかとんがったスーパー能力を持ち、さらに、持っているだけではダメで、それをうまく生かして大きな変化をもたらすような人を求めているといった話だったと思います。特に、リーダーシップを重要視していたような印象でした。このリーダーシップが良い結果を出すのには2〜3年はかかることもあるので、こういう点でも、アメリカの受験戦争は長期戦です。

→※今回の「アメリカ便り10」は、2回に分けて掲載をさせていただきます。
続きは、「アメリカ便り10(2)」。(事務局)

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